起業をテーマにしたコーチは少なくない。
起業コーチングや起業家コーチングなどの肩書で、起業したい人や創業間もない人(以下、起業家とする)に対してコーチングを行う。
コーチングと起業家の相性を考えたい。
まず、起業家が抱える課題はどのようなものか。
・ビジョンの明確化
・経営計画作成
・顧客開拓
・ブランディング
・広告宣伝
・仲間集め
・資金調達
・孤独感
といったところだろう。
これらの課題に対して、果たしてコーチングはどう機能するのか。
コーチングの目的は
・目的の明確化
・目標設定
・課題の明確化
・行動の明確化
・プロセスの客観視
・メンター機能
などである。
・ビジョンの創造
コーチングでは「どうなりたいのか」から全てが始まる。
起業家にとってのビジョンとは、事業の目的でありゴールである。
コーチングによって「どうなりたいのか」というビジョンはより明確になるだろう。
・経営計画の作成
ビジョンが決まれば、そこに行くための計画が必要である。
計画作りに苦戦する起業家も多い。
コーチングでは質問形式のコミュニケーションで、どのような方法でゴールに向かうのかを徹底的に掘り下げていく。
唯一無二の計画ではなくあらゆる方法があることに気付き、実現可能な計画が作られるだろう。
・顧客開拓、ブランディング、広告宣伝
コーチングでは、顧客(ターゲット)を絞る為にペルソナを明確にする。
「いつ、だれに、なにを、どのように、どんな方法で提供したいのか」
そして、その人に届き、買ってもらうためにはどんなブランディングを行い、どんな広告宣伝をすればいいかを掘り下げることができる。
・仲間集め
仲間が必要ということは、足りない部分を補う必要があるということである。
コーチングを通して、客観視と自己理解が深まっている起業家にとって「どんな仲間が必要か」は自ずと明確になる。
あとは、顧客開拓と同じでペルソナを明確にして行動するだけである。
・資金調達
資金調達については、コーチングではなくコンサルティングの側面が強いだろう。
なぜなら資金調達の方法は「明確な方法が存在しているから」である。
コーチングで引き出すというよりは、専門知識を持っているかどうかに掛かってくる。
・孤独感
ほとんどの場合、創業時は1人である。
仮に仲間や社員がいたとしても、精神的な意味では自身で抱えていく人の方が圧倒的に多い。
コーチとは、メンターであり、ビジネスパートナーであり、ブレーンであり、良き相談相手である。
しかも、事業に対しては仲間や社員とは違い第三者であり当事者ではないのだ。
一見デメリットのようにも見えるが、実は経営から一歩離れた客観的な関わりこそ、起業家にとっては最も心強い存在である。
起業家自身がコマを進めながら、その横には常にコーチがいるのである。
以上を考えると、起業家にとってコーチングは最高の相性であると言えるのではないか。
では、起業家にとってベストなコーチとはどのようなコーチか。
コーチングスキルはもちろんであるが、スキルに加えて
・経営に関するコンサルティングもできる(資金調達、事業計画実務など)
・起業家自身の価値観を尊重してくれる
・上下ではなく対等なビジネス関係を築ける
欲を言えばもっとあるだろうが、これらの要素は最低限必要になると思われる。
ただし、コーチングと言いながら
「上手くいく方法を教えます」
といった類のサービスを提供する人もいるので注意が必要だ。
それ自体が悪いものかはさて置き、本来のコーチングは「方法を教えるのではなく、クライアント自身の考えを明確化する」からである。
コーチを雇う上での参考になれば幸いである。